確定給付型年金とは
確定給付型年金とは事業主が従業員と給付の内容をあらかじめ約束し、高齢期において従業員がその内容に基づいた給付を受けることができる企業年金制度のことです。給付内容があらかじめ定められることから、DB(Defined Benefit Plan)、「給付建て年金」とも呼ばれる。年金資産は一括して運用され、運用のリスクは企業が負います。
確定拠出年金(Defined Contribution Plan)とは違い企業側は給付時に積立金が不足した場合に補填する必要があります。そのため退職給付債務をを計上します。
確定給付型年金のリスク
確定給付型年金のデメリットである積立金不足が起こってしまう要因として以下の二つが挙げられます。
- 受給者の長寿化によって給付期間が増加すること
- 低金利によって退職給付債務の割引率が低下することで退職給付債務が増大すること
欧米では、急激なインフレに対応するため金利についても急激に上がり始めていますが、日本ではまだ金利の上昇傾向は見受けられません。
また、日本では既に高齢化が進んでいますが、欧米等の先進国ではこれから急激に高齢化が進んでいきます。これはほぼ確実に起こりうる未来になります。すなわち退職給付債務の増加につながります。
確実に到来するであろう未来の傾向についてまとめていますので気になったら確認してみください。
リスクの減少方法
では増加するリスクにどのように備えたらいいのでしょうか。
確定拠出型年金のリスクを少しでも下げる方法について以下に説明します。
方法 | 内容 |
1 掛金の増額 | 加入者が拠出する年金資産を増加させることで積立不足を解消する |
2 制度の変更 | 給付金額の減少、新規加入の禁止等 |
3 一時金の選択肢の提案 | 一時金を支給し給付債務を縮小させる |
4 リスクの外部移転 | 年金バイアウト、年金バイイン等 |
確定拠出年金の4つの主なリスク減少方法を紹介しましたが、1、2、3の方法では、加入者にリスクを移転しているため、基本的には企業側は避けざるを得ません。そのため、企業側が、近年増加している確定給付年金のリスク減少を図る場合には4番の年金バイアウトが選択されることが多いです。
確定給付型年金のバイアウト
年金バイアウトとは、確定給付制度の資産と債務を一定の手数料(バイアウト・プレミアム)を上乗せして保険会社に移転することにより、確定給付制度に関するリスクを外部に移転され、年金債務は企業のバランスシートからオフバランスされます。一方、年金の資産と負債を引き受けた 保険会社は個人年金保険などを利用して、 加入者・受給者等に対して年金給付を行う
こととなります。
欧米では近年の確定給付制度のリスクの向上により年金バイアウトへの注目が高まっています。2012年以降に大手自動車メーカーのGMや通信大手のベライゾンによる大型の年金バイアウトが成立し、2015年以降は年間100億ドル超えの市場となっています。
日本では少子高齢化により公的年金給付の縮小が避けられない状態であり、企業型年金のような私的年金の重要性が一層増していく状況にあります。日本にとっては企業年金の普及拡大を目指さなければならない観点から年金バイアウトの普及については否定的な意見もあります。しかしながら、年金バイアウトは年金給付の提供者が企業から保険会社等に移動するだけであり、決して否定するようなものでもないのではないでしょうか。保険会社にとって新たなビジネス市場の登場とも言えますので、今後日本でも許可されればさらに国際的に市場が拡大していくことが想定されます。是非注目してみてください。
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