これは少し昔のお話。
紳士淑女が優雅に暮らす素敵な国での出来事。
その国は多くの国が属する連合国の中で、最も経済が発達した国の一つであり、大変富んでいました。この国が富んでいたのは連合国に加盟することで自国の優れた製品を連合国内に自由に売買することができたからです。
そしてその富は国民にしっかり返ってくるような法整備がされており、その国の福祉は大変手厚いものだったと言います。
しかしながらこの国は連合国に加盟していることで不満もありました。
それが国の福祉を目的とした移民です。
ちゃんとした手続きをとり、移住するものはまだいいにしろ、多くの不法移民の姿もあり、大変困っていました。
また、連合国からの資金援助が手薄いことにも不満がありました。なぜなら、その連合国では農業政策に多くの予算が振り分けられており、非農業国だったその国にとっては大変不公平に感じられたからです。
困ってはいたのですが、連合国に加盟している以上従わざるを得なく、この国には有効な手立てがありませんでした。ただ一つ連合国を脱退することを除いては。
そして2016年この国では連合国を脱退するかしないか、国民投票が行われたのです。
ここまで読んで多くの人は気づいているでしょう。これはイギリスがEUを離脱すると決まった時のお話です。
世界中に注目を浴びたイギリスの国民投票の結果ですが、EU残留支持が48%、EU離脱支持が52%とという昨年のトランプ対バイデンの大統領選よりも僅差でEUの離脱が決まりました。
ただ一つ興味深いのがこの結果は「雨によってきまったのではないか」という意見です。
実はこの国民投票が行われた2016年6月23日、イギリスで雨が降りました。ロンドンを含むイギリス南東部は前日の夜から豪雨に見舞われ、投票当日23日も断続的な大雨で浸水の被害が発生したり、交通網も乱れていたと言います。
さて、みなさん。みなさんはイギリス国民です。高貴な家庭に育ち、完璧に仕立てられたスーツを着て、ビジネスに生きる紳士淑女です。そして今のEU経済圏に不満はありません。今のまま、国が、経済が、続いていけばいいと考えています。なにも変わらなくていいのです。
今日は国民投票の日、しかしながら、外は大雨。傘を持ち、それでも濡れるような雨に打たれながら投票に行きたいと思いますでしょうか。どうでしょう?
多くの人が「めんどくさい…」と感じたのではないでしょうか。ちなみに投票前の世論調査では残留支持派が優勢と伝えられていました。
今なおさら「行かなくてもいいか…」と思いましたね。
対する離脱派はどうでしょうか。現状に不満があります。投票すれば明るい未来が見えるかもしれない。そんな人々はどうでしょうか。
例え外が雨でも投票しますよね。そこにチャンスがあるのだから。
この行動心理の差が、事前の世論調査の結果をひっくり返したということです。
2021年現在、何度もの延期を経て、イギリスは正式にEUを離脱しています。
離脱したことによってどのように国民の生活、経済が変化したかは、国民出ない私にはあまりわかりません。
しかしながら、当時運命を決める日に降った雨が、この国にとって祝福の雨であることを願います。
この話を信じるか信じないかはあなた次第です。
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